企画展 - 2019.9.20
東ティモールのタイス|100%天然素材の美しき伝統織物の着色方法
今回は、日本のソトガワ、「東ティモール」という国の伝統工芸品の紹介です。
東ティモールは、アジアで最も若い国、かつ21世紀最初の独立国です。
インドネシア・バリ島の東側に位置するティモール島の東側半分であり、日本の岩手県と同じくらいの面積だと言われています。
その東ティモールを代表する伝統的な工芸品が、「タイス」と呼ばれる織物です。
現地語(テトゥン語)で「着る」という意味をもつ布製品なのですが、伝統的にお祝い行事の装飾や、ゲスト訪問の際の贈呈品にも使われています。
東ティモールの伝統織物タイス
タイスの柄や織り方は、東ティモール国内でも地方ごとに異なります。
地方により違いはありますが、お花やヤモリ(東ティモールでは大変身近な存在であり、殺してはいけない生き物とされています)、ワニ(東ティモールでは神聖な生き物とされています)などをモチーフとしたものもあります。
タイスの色味は、大きく分けて2つに分けられます。
●市販の糸(主にインドネシアから輸入したもの)を使用して織られるもの。
●天然染の糸を使用して織られるもの。
市販の糸を使用して織られるものは、ハッキリとした色合いであることが特徴で、カラフルなものも多いです。
それに比べ、天然染のものは自然の素材を使用して色を染めていくため、優しい淡い色合いが多くなっています。
タイスによっては、1枚の中で市販の糸で織られた部分と、天然染の糸で織られた部分の両方を混ぜているものもあります。
今回は天然染の中から3種類の素材、それぞれの染める工程をご紹介します。
いずれも、色の付いていない白い糸束に色を入れていきました。
東ティモールの天然染①【赤紫のエシャロット】
東ティモールでは、赤紫のエシャロット(小さい玉ねぎとほぼ同じようなもの)が流通しています。
こちらを使用し、紫がかったピンクの色を作っていきます。
1)まず、フレッシュな赤紫のエシャロットを小さく切っていきます。
2)その後、すり鉢の中に切ったものを入れ、さらに細かく棒で叩きながら砕いていきます。
3)そして別の大きな容器に砕いたエシャロットを移し、そこに水を足します。その中に糸束を数分間ほど漬けて色を浸透させていきます。
今回は、フレッシュではなく冷蔵庫で長期間保管させた赤紫のエシャロットを使用したため、一部痛んでいる部分(黒くなっている部分)もあり、そちらを取り除いてから使用しましたが、通常はフレッシュなものであれば良いようです、エシャロットは乾燥してしまうと色が出にくいそうです。
東ティモールの天然染②【ウコン】
1)皮を剥いたウコンをすり鉢の中に移し、こちらも同じく棒で叩いてウコンを潰していきます。
2)細かく砕けたら赤紫のエシャロット同様、別の大きな容器に砕いたウコンを移し、そこに水を足します。
3)糸束を漬けて色を浸透させ、そこでレモンを絞ります。
すると、レモンの酸による変化だと思われるのですが、ウコン色だった黄色が一気にぱっと明るい黄色に変化しました。
この黄色は、天然染とは思えないようなハッキリとした鮮やかな黄色になります。
東ティモールの天然染③【木の皮】
今回は、モクマオウ科の木の皮と、もう一種類別の木の皮(詳細不明)を使用しました。ピンクに近い薄めの赤茶色を作っていきます。赤紫のエシャロットから作ることのできる色と近い色かもしれません。
1)木の皮を写真ほどの大きさに折り、そのまま鍋で煮出し、色を出していきます。
2)煮出した汁を熱いまま別の大きな容器に移し、そこに糸束を数分間ほど漬けて色を浸透させていきます。
3)石灰の粉を汁に足すと、色が濃くなります。
いずれも、天然染を行っただけだとまた洗った際に色が抜けていってしまうため、その後色止めを行います。色止めは、石灰水に漬ける方法と、塩水に漬ける方法で行っていました。ただ、石灰水だと変色の可能性があるため、変色させたくない場合は、塩水を使うとのことです。
最後に、糸についたゴミを落とすためと、色ムラをなくすために糸をシャンプーで洗い、その後、糸を吊るして干して完了です。
東南アジア最後の秘境「東ティモール」を知ろう
いかがでしたか?
東ティモールでは、天然染だけでなく藍染めなど、様々な染色手法が行われています。
タイスは、市販の糸のもの、天然染のもの、それぞれに良さがあります。東ティモールを訪れる際は、ぜひお気に入りのタイスをぜひ探してみてください。
そもそも東ティモールってどんな国?という方は、以下の観光情報サイトを訪れてみてくださいね。
▼東ティモールについて
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