企画展 - 2018.11.15

波佐見高校生たちも感動!平和への願いが込められた「折り鶴」が姿を変えた波佐見焼

 

長崎市は、広島市とともに世界で唯一原爆の犠牲になったことで知られる都市です。そしていまなお、原爆投下による惨状が語り継がれる長崎原爆資料館には、核兵器廃絶や恒久平和を願った全国の学校や企業などから年間約900kgもの千羽鶴が寄せられるそうです。

 

これらは通常1年間展示した後、解体して市内のリサイクル施設の古紙回収に出されますが、この資源を有効活用しようと立ち上がったのが、陶芸の町、長崎県・波佐見町を拠点に活動する「HASAMIコンプラプロジェクト」。いま彼らは、これらの折り鶴を波佐見焼の原料として再利用する取り組みを始動しています!

 

アートを軸に地域活性化を目指す「HASAMIコンプラプロジェクト」を率いる波佐見町出身の現代アーティスト、松尾栄太郎さんと戦争や原爆をテーマにした現代アートを手掛ける太田三郎さんが中心となって動き出したこのプロジェクトは、平和への思いを特産の陶器に込めようと、折り鶴の灰を原料に、鶴をモチーフにした箸置きや小皿などを製作し、商品化を目指しています。多くの人の祈りが込められた折り鶴が形を変えてあの波佐見焼に生まれ変わるなんて、なんだか感動的ですよね。

 

 

そしてその試作として8月1日には、地元、波佐見高校美術工芸科の1、2年生に呼びかけ、生徒たちとともに長崎原爆資料館と国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館から提供された20kg分の折り鶴で焼き物を作るというワークショップを実施しました。

 

専用の焼却炉に着火し、順番に折り鶴を投入していく生徒たち。この灰になった折り鶴を粘土に練りこんで陶土をつくり、作品を形成していきます。後日、協力を得た県窯業技術センターの窯で焼成してもらい、約40点もの作品が無事に焼き上がりました。生徒たちからは、「どんな色に焼き上がるか想像できなかったので、綺麗な淡い青磁色に焼き上がったのを見て感動しました」と感動の声も。それぞれ趣の異なる仕上がりや出来栄えに満足な様子でした。

 

プロジェクトを主催する松尾さんは、「この活動によって、波佐見の産業が活性化することはもちろん、鶴を折ってくれる人にも活動内容が伝わり、長崎や広島に届ける意味がさらに深まるとうれしい」と語ってくれました。波佐見の窯業に携わる職人や企業にも活動が広がり、今後町全体の新たな産業として確立していけば素晴らしいですね。

 

この日は、太田三郎さんによる戦争や原爆にまつわる作品についてや、被爆体験者による体験記なども語られ、生徒たちは自分が体験していない原爆のこと、さらには折り鶴を折った人の気持ち、時を経ることで汚れていく折り鶴との向き合い方などを考える特別な機会になったのではないのでしょうか。

 

戦争で亡くなった方への鎮魂の思いを込めた折り鶴から生まれる波佐見焼。今回の作品をモチーフにした太田先生の作品が美術館でギャラリーにお目見えする可能性もあるかも、とのこと。こちらも楽しみに待ちたいですね!!

 

 

写真:  フォトグラファー田崎遼太 

 

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