レポート - 2017.03.11
香川県出身 作家 足立拓人の原点を探る
3月5日まで私、のりたけたかこがディレクションするお店「LUCK」で行われていた、「足立拓人 大キーホルダー展」
彼とこの企画をすることになったのは昨年9月に京都で企画した「にほんって?」という企画で
彼が出展した作品がきっかけだった。
「にほんって?」は47都道府県の出身・在住の作家を1人ずつピックアップし、作家から発信する日本を届ける、という企画。
香川県出身の足立さんが用意した作品はキーホルダーだった。
そのキーホルダーは彼がデジタルで描いた香川県出身の偉人「空海」がプリントされ、その上に彼が直接ペイントを施すというものだった。
彼の作品は私が企画したテーマをとても楽しんでもらっているように見え、そしてそのアウトプットの仕方もとてもユニークで私はとても嬉しかった。
故郷「香川県」を切り口に「足立拓人」という作家を紐解いてみる。
故郷について、そして作品について、足立さんにいくつかの質問をしてみた。
足立さんにとって香川県はどんな町ですか?
香川県は小さいというイメージです。現に都道府県の中で一番小さいです。
小さい山と池と人気のない神社が点々と存在して、田んぼと家が3:1くらいで配置されているような風景。熊や鹿のようなカードが飛びだす雄大な田舎でも新幹線が停まるような都会でもないので、田舎自慢、都会自慢では初戦敗退です。
思春期の自分には刺激も手に入る物品も少なくて、早く実家をこの土地を出たいと思っていました。
20代半ばの時に1ヶ月くらい実家に帰った事がありました。その時、一丁前に悩みなんかあったりして。
朝日が出た瞬間から庭のケヤキの木から複数の蝉が鳴き、雨が一粒落ちるとカエルの大合唱が開演します。メガネをかけると名前も知らない小さな花が咲いていて、週末になると中学生で構成された暴走族が盗んだスクーターにまたがって国道を駆け抜けます。
捨て台詞を吐くように出て行った自分を迎えてくれたのは、生命力に満ち溢れた小さな者たちでした。「ミーンミーン!お前の声なんて聞こえんわ!」「ケロケロ!歌え唄え!」「ブーーーン!どけどけー!」みたいな。その音が半人前の悩みを搔き消し、自分のサイズを気づかせてくれました。
大きいことが良いのではない、自慢しなければとても豊かな場所。そんなイメージです。
香川県をテーマに作品をお願いしたときに、足立さんが制作してくれたのは香川県出身の僧「空海」をモチーフにしたキーホルダーでした。
なぜ空海をモチーフに?
空海をモチーフにした理由はなくなくです。
もっと他のモチーフでオシャレなキーホルダーを作る予定でしたが、キーホルダーの外側を発注した時に傷だらけの部材が届いて。構想していたのだと傷が目立つので、かっこつけるより笑える物作ろうと方向転換しました。
やってみると案外楽しくって、でもすぐアイデアは枯渇して。新しく湧いてくるのはギリギリのやばいやつで。こりゃ売れんなぁなんて笑っていたら、ギリギリのやつから売れてって。皆変わってるなぁと思いました。
香川という土地が今の足立さんにどんな影響を与えていますか?
思春期は、とにかく刺激に飢えていました。
手に入る物もお金も限られていたので、さらに煮え繰りかえっていたかもしれません。
興味はあるけど物はないので、仲間たちと作ったり、手に入るものを擦り切れるまでやりこんだりして、遊んでいました。無ければ作る、やって出来ない事は少ない、みたいなのはその頃に身についた思想かもしれません。
あと自分は絵を描くという環境には恵まれていました。家の近くに画材屋があって、高校も美術科のあるところに通っていました。そこで出会った仲間たちの作品にも刺激を受けましたし、一緒に無いものを作って、擦り切れた物で遊んでくれました。
今の制作の基礎は全てその環境が与えてくれたと思っています。有ってラッキー、無くてラッキーです。
足立さんが作品をつくる上で大切にしていることはありますか?
作品を作る上で大切にしている事は、続けていると少しずつ変わってきて気づくと180°変わっているので、確固たるものはありません。
最近だと時間をかけないように心がけています。考えたら考えた量、悩みや欠点も生まれるので、頭の中のイメージの鮮度を大切にしています。楽しいとか面白いとかの。
必要以上考えないって感じです。
あとはこだわりになるのですが、今の自分が良いと思った作品しか展示はしません。なので、10個描いて10個とも出展する事はありません。良くないと思った作品出して、それが好評だと迷子になってしまうので。
描いたものは他人に観てもらって初めて作品になりますが、そこまでの順路は自分でキチンと踏みたいという感じです。
最後に今後の作家 足立拓人はどうなるか、と近々の活動予定を教えてください。
今後の自分はどうなるんでしょう。
考えてもどうしようもないので、良いものを作り続けます。
ありがたい事に一昨年の年末くらいから、ずっと展示やイベントが続いているので、時間的に出来なかった事や得たものを形にしたいなぁと思っています。新しい構想もあるし。
あとは、堀田君(※作家の堀田知聖さん)が日本に帰ってきたので、最高記念室(※作家 水野健一郎さんを中心とする美術グループ)も再開したいし、展示もしたいなぁ、といつも通りです。
3/24よりエキュート神田万世橋でAnonymous Camp Tokyoというイベントでキーホルダーを出展します。遊びに来てください。
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